この手を離さない
途中、手に持っていた鞄を地面に落としてしまった。



あくまで車いすの人の立場を経験したかったから、あえて立ち上がらず座ったまま手を伸ばした。



しかし、なかなか届かない。


何度も手を伸ばして、車いすを小刻みに動かしてやっとのことで持ち手に手が届いた。



その間、そばを何人もの人が通り過ぎたが、私に声をかけてくれる人は皆無だった。



冷たい視線だけは嫌という程浴びせられた。



< 121 / 191 >

この作品をシェア

pagetop