ココアの甘さ
「なあ、美華。」

あぁ、来てしまった。話したくない方へと傾いているのが分かる。
けれど、恵介はそれを許さなかった。

「何で、嘘をついてた?」
「...嘘なんて言った覚えはないわ。」
「じゃあ、何で隠してた?」

何も返せず、ただ口を閉じていた。けれど、言わなきゃいけない。

「別に、あそこに行くのは医者としての自分を捨てたかっただけよ。」

医者として歩む道が見えなくなった頃に、あの店を見つけた。

ここなら私を捨てられる。そんな気持ちだった。

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