俺様上司は溺愛体質!?

「でも、あの、その……」
「ごめん、困らせたくないんだけど……その、前からいいなって思ってて。でもなんていうかきっかけないままズルズル時間経つし、異動になるし……それからどんどんきれいになるし……焦るし。で、今更聞くけど、まっ……真屋さんと付き合ってたりしてないよね?」
「しっ、してないですよ……」

 なぜ真屋時臣の名前がここで出てきたのか、ちとせは反応に困ってしまったが、きっと自分の好意がバレバレなのだろうと思い至った。

『俺を屈服させてみせろよ』

 真屋時臣の熱っぽい声が今も耳には残っている。
 けれど彼を振り向かせるような『いい女』になるって、じゃあなにをどうしたらいいのか、結局わからないままだ。

「だから、俺にチャンスをください」
「でも……」
「俺のワガママだけど、君が真屋さんと付き合ってないなら、何もしないままフラれたくないんだ」

 伊東のまっすぐな真面目さが伝わってくるような言葉に、ちとせは胸が詰まる。

 十年前、自分が真屋時臣にこっぴどく振られたことを思い出して、あまり強く出られなくなる。
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