俺様上司は溺愛体質!?

 振り返ると営業部からネイビーのスーツ姿の男性が飛び出してくる。
 ちとせも知っている、二つ先輩の伊東だった。

「それ重いだろ。運ぶの手伝うよ」

 伊東は元ラグビー部の営業部のホープだ。
 とにかく爽やかで明るく、絵に描いたようなスポーツマンタイプである。もちろん社内の女子にもとても人気がある。
 けれどちとせは彼の事務処理担当ではなかったので、今まであまり接点がなかったのだ。

「いえ、大丈夫です。台車に乗せてますから。でもありがとうございます」

(親切な人だなぁ……さすが営業のホープ。気が利いてるわ。)

 のんきにそんなことを思いながら会釈をし、改めてまた台車を押そうとすると、
「あ、じゃあ俺も上に行くから、エレベーターまででも」
 と、伊東は慌ただしくちとせから台車を奪ってしまった。


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