小話置き場


とはいえ幸か不幸か、彼らには女として見られていないので、先輩が心配するような必要はないといえばないんだけど。


例えば、私が廊下で男子と盛り上がっていたら、先輩とばったり会ってしまったとき。


私は内心慌てたけど、彼は何食わぬ顔でこちらに軽く手を振っただけだった。


そんなことが、付き合い始めて既に四回ほど起きている。


付き合う前とまるで逆なのだ。今、主に嫉妬しているのは私の方だ。


わがままな悩みだと思う。だけど私には彼のヤキモチが必要なのだと、最近なんとなくわかってきた。



単純に人間としてのスペックでいえば、汐見先輩の方が断然上だ。私は彼にあらゆる面で劣っている。



傍目に見て『なんでこの子が汐見くんの彼女なの?』と疑問に思ってしまうのは、当然のことだ。私たちは明らかに釣り合っていないのだ。


そんな私が、今まである程度余裕を持って汐見先輩と仲良くできたのは、彼が私のことを想ってくれているとわかっていたからだ。


周りがなんて言おうと、彼は私のことが好き。


その確信があったから、余裕があった。私たちの安定した関係は、実は彼の重い愛が支えてくれていたわけだ。




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