小話置き場
「……ハイ」
もとより断る気はない。
だけど、なぜか怖いモードに入っている彼を前に、私は少し怯んでしまった。
昨日のこと、怒ってるのかな。いや、ちょっとちがうかもしれない。……わからない。
ああ私、全然先輩のことわかってないんだなあ。
勝手に理解してるつもりになってた。私ってほんと、まだまだ子供だ。
「今日の昼休み、また勉強してたんだけどさ」
校舎を出るまで気まずい沈黙が続いていたけど、唐突に彼の口が開いた。
「うえ……は、はい」
「今回のテストが終わってからも、定期的に勉強見てくれないかって言われたんだよね」
ええ。ま…マジか。
ってことは、これからも先輩ガマン週間が訪れるのか。
私は内心ものすごく動揺した。
でもここで「嫌です!」とか言ってどうするんだろう。
先輩は春から三年生だし、勉強に時間を費やすのは当たり前のことだ。私だって良識くらいはある。先輩の勉強の邪魔をするのは、私の望むところではない。