小話置き場
「……今日」
私が頭の中でぐるんぐるん無駄な思考を巡らせている中、先輩が沈黙を破った。
「今勉強教えてる女子に、告られた」
「ええっ!!」
告られた!?ウソ!ギャア!!
頭がパニックになった。マジかよ!確かに私が先輩の教室に行ったとき、私を明らかに目の敵にしてる人はいたけど!
「そ、そ、そお、ですか……」
しどろもどろに返事をする。先輩がまたじっと私を見る。私は目をそらす。
今、彼がこうやって私の隣を歩いているということは、告白は断ってくれたのだろう。
もし『告白オーケーしたから別れて』とか言われたら、私はこの場で仏となっていた。
正直、もう女子に勉強教えるのやめてほしい。
普段汐見先輩は女子と話さないから、今回勉強教えてもらって『優しい❤︎』ってなっちゃったんだろどうせ!くそう!
嫉妬にまみれた暴言が、私の脳内で飛び交う。
先輩はまるで理科の実験中みたいな目で、私の反応を観察している。
今口を開いたら間違いなく『ちくしょううっかり告られやがってこのイケメンが!!』と口汚く罵倒してしまうだろうからやめてほしい。
私は目をそらし続けた。やがて横から深いため息が聞こえてきた。
冬は日が暮れるのが早い。夕日が先輩の表情に影を落としていた。