小話置き場
「……なかなか素直にならないね」
言いながら、彼はそっと私の顎に手を添えた。ぐいっと上を向かされる。
う、うわー!少女漫画みたいなことされたー!!
内なる興奮を抑えながら、不機嫌な顔の先輩と目が合う。
す、素直って。
私が本当はちょっと寂しいって思ってるの、バレてる?
「す、素直って……限度がありますよ」
「ヘラヘラ笑顔で誤魔化されるよりマシ」
「……怒ってます?」
「ちょっとね。……僕も昨日の夜考えたんだよ。君がなんで必死に笑ってたのか」
や、やっぱりか。完全に見抜かれている。
うええ、でもさあ、私はワガママになりたいわけじゃないんだよ。
「ウソだよ」
突然、先輩が真顔で言った。
「え?」
「告られたっていうの、ウソ。ついでに今後勉強教えてっていうのも、めんどくさいからすぐ断った」
断ったというのを聞いて、ちょっとホッとする。だけどすぐにハッとした。
ええ!?告白がウソ!?
あまりに悪びれなくサラッと言うので、逆にビビった。