小話置き場


汐見先輩は普段変化の少ない表情をわずかに動かして、私にその愛情を伝えてくる。



私を好きだと訴えてくる彼の目が、私はとても好きだ。



「いいよ」


穏やかな声の裏側に、静かな歓喜の色を感じて、なんだかむずがゆい気分になった。


このひとは私のことが好き。

私もこのひとのことが好き。


だから付き合ってる。当たり前だけど、奇跡みたいなことだ。



「相変わらずラブラブだね〜、おふたりさん」



私たちのやり取りを机に頬杖をついて聞いていた松原先輩が、苦笑いしながら言った。



「そ、そうですかね」

「うん。見てて結構恥ずかしい」

「わあ……すいません」


そういえば前にもチョコちゃんに『バカップル』って言われたんだっけ。


カップルがイチャつく現場というのは、微笑ましいを一歩過ぎるとただウザいだけになる。長い独り身時代でそれは嫌というほど味わったからわかるのだ。私は非リア充の味方だ。



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