ヴァイオレット
『今夜も始まりました、ミュージックスタジオ!』

電気屋の近くまで来ると、ちょうど人気音楽番組"ミュージックスタジオ"が始まったばかりだった。

次々ゲストを紹介していく司会者。

『最後はいま話題のシンガーソングライター"雅人"!』

客席の間の階段から降りてくる一人の男性。

ーーそれこそあの雅人さんだ。

雅人さんの出演の日、今日だったんだ。

この3年で雅人さんは、歌手なら憧れるミュージックスタジオのステージの上に立てるくらいに有名になっていた。

変わってないな…

優しい笑顔に、優しい声。
雅人さんはもう、私とは別世界の人間になっていた。

マイクで話す雅人さんを見つめる。

雅人さん……

テレビ画面の雅人さんに触れる。

もう届かない。
私の手も、声も。

この画面越しでしか、雅人さんを見つめることができない。

あの日に戻りたい。

今でも好きなんだよ。
そう伝えられたらどんなに良いだろう。
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