ヴァイオレット
司会者の言葉のあと、エレクトーンの前に座る雅人さんが映し出されて曲が始まる。

切ないメロディーに、雅人さんらしさを感じた。
私はその位置のままテレビ画面を見つめる。

ーー
きみと初めて出逢ったのは
駅前のベンチの前

緊張したきみの表情(かお)は
今でも覚えている

歌う僕に微笑んでくれる
そんな日々が大切で

時間が止まればいいと
思ったこともあった

きみの言葉が僕を動かす
いつのまにかきみを見つめていた

あの時言いたかった
言葉はいまでも伝えられずに
胸のなかの引き出しに
しまったまま

もう一度会えるなら
僕はあのベンチの前で
きみを待っていたい

初めて話したあの日、あの時間
僕はきみを想って待っている

これが僕の
あの日ホームできみが言った
言葉の返事として届けよう
ーー


……行かなきゃ。

私は電気屋を後にして、駅へと向かっていた。

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