ヴァイオレット
もしかしたら……

私は期待と不安を抱きながら、ホームから階段を一歩一歩降りていく。

家の最寄り駅の改札を降りると、右手のベンチには黒いジャケットのフードを目深にかぶった一人の男性。

私は一歩一歩、ベンチに歩み寄る。
心臓は歩く度に鼓動がはやくなる。

顔がわかるほど近づいたとき、私は視界が涙で滲んでいくのがわかった。

ベンチの男性は、私に気づくと右手でフードを取る。

「まさと、さん…」

ずっと会いたくて会えなかった人。
もう、会えないと思っていた。

「すみれちゃん、久しぶりだね」

変わらない笑顔。
優しい声。

雅人さんは有名になったという以外、3年前と何も変わっていなかった。

「本当に…本当に雅人さんなの?」

3年間、会いたくて会いたくて仕方がなかった人。

これは私のつくりだした妄想なのかもしれない。
はたまた夢なのかもしれない。

それでもいいと思った。
私を見て真っ直ぐ微笑んでくれる…それだけでこんなに嬉しいだなんて。
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