甘く苦い、毒牙に蝕まれて
「正直に言うとね、私、万桜くんの事は別に好きでもなんでもないんだよねぇ~」
「……」
放課後の騒がしい教室。
彼女が、こんなとんでもない発言をしているなんて、誰も夢にも思わないだろう。
「だったら何で……」
「うーん、しいて言うなら、イケメンだから?」
「は?」
「ほら、私みたいな美少女には、あーいうイケメンな彼氏が釣り合うでしょ?それに、自慢にもなるし」
「たった……それだけの、理由で……?」
そんなつまんない理由で私から万桜を奪ったの?
好きでもないのに、告白なんてしたの?
「それに……どうしても、奪いたかったの。まひろちゃんから、万桜くんを」
「……どうして?」
「気に入らなかったのよ。あなたみたいな冴えない地味な女が、あんなイケメンを独り占めしてるなんて……」
「そんなの、ただの嫉妬じゃないのっ……」
「別に、嫉妬してたわけじゃないし。ほら、人のモノってなんかすごく魅力的に見えるし……ちょうど、みんなの自慢になるような彼氏も欲しかったし~」
目の前で、ヘラヘラ笑うこの女に強い怒りを覚える。
「それに、嫉妬してるのはまひろちゃんの方でしょ?いつも万桜くんの事を未練たらしく見つめちゃって。悪いんだけど、万桜くんは、あなたよりも私を選んだの」
「もう、黙って……」
「だから大人しく引っ込んでてよ。私と彼はもう、校内で評判のお似合いカップルなんだから~」
「黙れって言ってるでしょ……!!」
怒りを抑えようとしてたけど、無理だった。