正義の味方に愛された魔女３

６ 記念撮影

龍二が山上さん親子を連れて出て行ってから帰ってきたのは、かなり遅くなってからだった。


沙耶ちゃんを襲ったのは暴行にあたるとして家裁から令状が出るらしいけれど、
ネットでの件は別件の令状でパソコンを調べなければならないらしい。
それでも、事件の内容と今後の彼の態度次第で、保護観察処分に留まりそうな話だった。


あの時視えた彼の、高校生活への後悔とか、未練とか…。
それを取り除かなければ彼が前に進むのは難しいんじゃないかな？

今回の事件は、そういう燻りが大きくなって爆発した結果だよね。

通信教育だって夜間だって、何だって方法はあると思う。
気持ちをそこまで持っていけるかどうかだけど。

ご両親との関係は、あの佐伯一家とはまた違う希薄さで…。
ううん、同じ様に会話がないんだ…。


つくづく思うけど、人は、会って話して触れあって、そうすることで本当に解りあえるものなんだよね……。

それはいくら文明が発達しても、昔も今もこれからもずっと変わらない。


「百合と隼人の間では考えられないことだろうな…。
解りすぎるのも問題だけど……特に隼人がやりづらい」


「うん。でも隼人は大丈夫だよ」


「その自信がすごいよな、多くの親子の間ではグラグラするもんなんじゃないか？」


「私は、隼人と龍二に対してグラグラすることは、まずないわ」


《もうこれは、百合の伴侶であることを誇りに思うレベルだよ》


「…大袈裟だよそれ。
私と隼人に言わせればね、龍二の人としての器は偉大なんだよー。
私の方が『正義の味方の伴侶』で誇りだよ。

そうそう！再来週の木曜日、記念撮影だからね」


「わかった。楽しみだ。俺は恥ずかしいけどな…。」
《百合、絶対に綺麗だろうな…》


「……やっぱりおばさんが着るのは変だったね、ってなったらガッカリするんだから、期待しないで」


「変なのは時々、中身だけだ…。でもそれも全部、愛してるんだよ俺は」


龍二はこれから先もずっとこうやって、年齢を忘れさせてくれる甘さで愛してくれるんだね。

視えているもの全部、写真に撮ってもらえたらいいのに……と、ついオカルトの様に思ってしまった。