課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜



 本当になんだったんだろうな、今の。

 まあ、なかったことにした方がいい……のか?

 倉庫を出ると、全部夢だったような気もしてくるし、と思ったが、廊下に出たとき、エレベーターの扉が開いて、何故か雅喜が降りてきた。

 それを見て、羽村が笑い出す。

「やっぱり来ましたね、課長。

 大丈夫ですよ。
 もう用事終わりましたから」

 心配性ですね~と言い、
「自分の彼女が一番モテるくらいに思ってますね」
と陽気に笑いかけた。

「いや……」

 別に俺の彼女じゃない、と言いたかったのだと思う。

 だが、なにも言えないでいるうちに、
「課長、戻って。
 エレベーター、行っちゃうじゃないですか」
と言い、雅喜にボタンを押させる。

 そのまま二人で雅喜について乗り込んだ。

 羽村は、普通に雅喜と世間話をして、自分のフロアで降りていった。

「伝票、あとで書いて持ってくよ。
 今、印鑑ないから」
と言って。

「……はあ」
とよくわからない返事をしてしまう。
< 287 / 444 >

この作品をシェア

pagetop