妬こうよ、そこはさ。【番外編】
俺が上げた驚きに、彼女も目を見張って手を止めた。


「え、りんごってうさぎにしない?」

「してなかった」


りんごをうさぎにしていたのは小学生の低学年の頃くらいか。


母が気紛れに耳をつけた、片手で数えられるくらいの回数しか、食べた記憶がない。


以来、うさぎのりんごは食べていなかった。


「うさぎ、嫌だった? 剥き直そうか?」

「いや、上手くできなくてしてなかっただけ」


黙ったのを悪い意味に取ったらしい彼女が包丁を持ち直したので、慌てて止めた。


剥き直すって、せっかくついてる耳を剥き直すってことだろ。


そこまでしなくていい、大丈夫だから。


載せた皿をテーブルに運びながら、説明を加える。


二人とも、ともすれば無口になりがちだから、こと好みについて、言葉は惜しまない。


そういう約束だ。


「嫌じゃないけど、びっくりしたというか」


何というか。


「……顔に該当する部分があると、どこから食べていいか迷うというか」


結局、何となく頭を避けて食べるけど。
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