偽りの御曹司とマイペースな恋を
私が貴方をかえてみせる!



「……」

二人分の夕飯の材料を買って、彼女への詫びの品も買って。
真っ暗な部屋にぽつんと居る瓜生。
だけどどうしよう、本当に帰ってない。ここに居ない。

もう帰ってこない?

あいつが居ない?もう来ない?


「うわあ!びっくりした!」

どれほどその場で呆然としていたのか分からないが
後ろで悲鳴をあげた声に我に返る。
振り返るとよほど驚いたのか尻もちをついた歩がいた。

「歩」
「イツロ君怖い!真っ暗な玄関に突っ立ってるの怖い!何か凄い怖い!」
「…ごめん」

本当に怖かったようで半泣きの顔で睨んでくる歩。
それでも何とか立ち上がり中へ。電気を付けて一息ついた。

「お尻痛い」
「怪我したか?病院行こうか」
「そこまでじゃない」
「そうか。…そうだ。お前、こんな時間までどこに居たんだ」
「いろいろ」
「遅くなるなら連絡をしろって何時も言ってるだろ」
「大丈夫だもん」
「歩」

また昨日みたいに険悪になる空気。

「……、…私だってもうそこまで子どもじゃない。1人で買い物とか出来るよ」
「……」
「イツロ君は心配し過ぎなんです。私は、…昔のままじゃないんだから」

すぐ隠れちゃうほど小さくて臆病でぼんやりした子どもじゃない。
背は小さいけどちゃんと自分で考えて動ける。
常に誰かに助けてもらわなくたって、なんとか生きていける。

「分かった。じゃあ、もう、好きにしろ」
「イツロ君」
「お前のやることに文句をつけて、鬱陶しいんだろ?
分かってる。お前の目。そんな目だ」
「そ、そういうんじゃ」
「……着替えてくる」

荷物をテーブルに置いて瓜生は自室へと去って行った。
歩は何か声をかけたいが出てこなくて。

「…あ」

ただ大人になったのだと認めて欲しかっただけなのに。

どうしようかおどおどしていたら見たことあるお店のロゴが入った包装紙。
これは歩御用達の店のもの。瓜生は絶対に入らない店のだ。
ということはこの中には歩へのプレゼント?

「腹減ってるのに遅くなって悪かった。今作るから」
「イツロ君」
「いいよ。全部俺が悪い。…俺、いっつも加減出来ないから。頭かどっか壊れてるんだ」

部屋から出てきた瓜生はそんな自嘲をしながら台所へたつ。
元から自分の出自について悲観的な人間であり何処か諦めている。
歩に拒否されたと思ってそれが更に悪化したのかもしれない。




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