偽りの御曹司とマイペースな恋を


「あ」
「雪か」

少女はすっかり窓から外ばかり見て雪を観察していた。
そしてついに振り出した雪。少年もその隣で見る。

「……イツロくんとずっといっしょにいられますように」
「お前言ってるぞ」
「はっ…ど、どうしよう…かなわない…?」
「じゃあ俺がかわりにねがっとく」
「うん」
「これでいい。ほらちゃんと防寒しろ風邪引くぞ」
「…くっついてもいい?」
「いいよ」

了承を得ると寄り添って隣に座って。

「あったかい」
「寝るなよ。お前と部屋違うんだ」
「ずっといっしょだったらいいのにな」
「……歩」
「ねむい」
「もう戻ろう。いい時間だ」
「うん。またあしたね。あしたは雪であそぼうね」
「あそぼう」

声を出来るだけ殺して笑顔で別れる。

まさかその数日後に歩がこの施設を出て行くなんて思いもせず。

今はただ誰よりも先に初雪が見られたのとお願いが出来たのと、
彼の優しい温もりに触れられて嬉しかったことしか覚えていない。



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