一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
私たちは、電車を乗り継いで大きな公園へやって来た。
天気は晴れ。少し暑く、日差しを避けるために木陰を歩く。公園の中には恋人同士や、若い男女のグループ。子供を連れた若い夫婦。絵をかく人や、写真を撮る人など色々な人がいて、それぞれの時間を過ごしていた。
「僕、ここへきたの初めてだな」
游さんはそういって、あたりを見渡している。
「そうなんですか。私は、すごく久しぶりです。学生のころだから、もう五年くらい前になるんじゃないでしょうか」
「へえ、その時は誰ときたの?」
そう聞かれて、正直に答えていいのかどうか答えに詰まった。
誰ときたかといえば、大学時代に付き合っていた恋人とだ。あの日私たちはボートに乗った。そしてそこで些細なことで喧嘩をして、後日別れたのだ。
そんな思い出があったことはすっかり忘れてこの公園を選んでしまうなんて、私ってちょっとイケてない。
「友達と、です」
「友達ね。……あ、ボートがあるよ。乗ろうよ!」
「え、でも、あぶないし」
「なにいってんの、大丈夫だよ。いこういこう」
珍しくはしゃぐ游さん。私はその勢いに負けて、二人乗りのローボートに乗った。