一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
ここの始業時間は八時半。倉庫の中で頼時を体操をした後、簡単な朝礼が行われる。
「本社から来た天原さん」
センター長は雑な感じで私のことをみんなに紹介した。
「天野由衣子と申します。早く仕事を覚えて一生懸命頑張りますのでご指導お願いいいたします」
当たり障りのない挨拶をすると、「リカちゃん」と誰かの呟く声が聞えてくる。
若い子がいいとか、巨乳がいいとか、そんな理由で働く相手を選ぶのはセクハラだ。
そう突っぱねてしまえばそれまでだけど、“リカちゃん”がみんなに愛される存在だったことは間違いない。私に対するみんなの認識は、リカちゃんが辞めることになった元凶。それ以外のなにものでもない。
二十歳の若さには敵わないし、容姿は生まれ持ったものでどうにもならない。もちろんそれに張り合うつもりはないので、仕事で認めてもらうしかないのだろう。
朝礼が終わると蓬田さんがセンター内を案内してくれた。
建物の中はいたってシンプルで、商品が置いてある倉庫の隣に事務所と休憩室があるだけ。
倉庫管理をするのは三十代と六十代の男性。派遣社員。主に倉庫内の物品管理と配送時の梱包、受け渡しをしている。
エンジニアは五十代の男性二人。正社員。新規購入時の設置や故障した機器類の修理。定期メンテナンスをしている。もちろん本社や開発部門にもエンジニアはいるけれど、センターのエンジニアはまちの電気屋さんのような役割だそうだ。横文字のエンジニアより、職人と言ったほうがしっくりとくる。
ここでの私の仕事は商品やレンタル機器の在庫管理や本社から贈られてきた発注書を元に商品の発注を指示すること。
そしてここをまとめるのはセンター長の広崎さんだけど、仕切っているのは事務員の蓬田さんだと思った。