一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「あんた、昨日と雰囲気が違うね」
会社のロッカーで居合わせた蓬田さんは私の顔をしげしげと見つめる。
「何かいいことあった?」
そんなことを言いながら、蓬田さんはチエックのベストを羽織り、少しきつめのボタンを留めた。
「いいことですか~?」
思い出すのは昨日の夜のこと。游さんの情熱的なキスを思い出すと、顔がほてる。私は気付かれないように着ていたワンピースを脱ぐ。
それから仕事用にしようと持って来ていたブラウスに着替え、スカートをはいた。
「分かった! 男ね。彼氏ができたんでしょう!」
そう言われて考えてみる。游さんは彼氏、なんだろうかと。
昨日、抱きたいとは言われたけど、付き合おうとか、好きだとか言われた記憶がない。もちろん私もそれを確かめたりはしなかった。
游さんは、女遊びをするような人じゃないので、私を好きだから抱いたのだと思いたい。
けれど、こればかりは本人に確かめないと分からない。
「……そんなんじゃないですよ。彼氏なんていません。気のせいですよ」
「そうかい?」
「そうです」
「私の勘は当たるんだけどね」
着替えが済んだ蓬田さんはバックとお菓子の入ったスーパーの袋を両手に抱えた。尋常じゃない量だ。
「それ、すごいですね。蓬田さんのおやつですか?」
失礼を承知で聞いてみる。すると蓬田さんは「あらやだ」といいながら笑った。
「ひとりでこんなに食べるわけないでしょう。ほら、あんたも早く着替えなさいよ。広崎さん、そろそろ来る頃だから」
「あ、はーい」
確かにセンター長が来る前に事務所にいたほうがいい。私は急いで着替えると、先にロッカーを出て行った蓬田さんを追いかけて事務所へと向かった。