一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
中に入ると先に来ていたはずの蓬田さんの姿はなく、センター長がちょうど出勤してきた所だった。おはようございますと挨拶をしてあてがわれたデスクに腰を下ろす。
後に十分ほどで朝礼の時間だ。私は業務マニュアルを開いて読み始める。すると蓬田さんがやってきて、私の肩を叩いた。
「ちょっと、なにのんびり座ってんの。ほら、立って!」
言われるがままに立ちあがると、蓬田さんは私の腕を掴む。
「なんですか?」
「いいからこっちきて」
蓬田さんは私を引っ張って給湯室に入る。
「広崎さんにお茶入れてあげて」
「センター長にですか? 飲みたいならご自分で淹れたらいいんじゃないですか?」
「なに言ってんの。お茶くみは女の仕事」
「それはちがうと思います」
「いいからほら、早く! 朝は緑茶だからね」
勢いに押されて私は渋々お湯を沸かす。そして玉露の缶を手に取った。すると蓬田さんは私の手からヒョイと奪う。
「違う違う。それは来客用。広崎さんのはこれ!」
「これ、ですか?」
指示された煎茶の缶から茶葉を少し入れて、丁度沸いたお湯を注いだ。
「えと、湯飲みは?」
「これ!」
蓬田さんは魚の漢字がびっしり書かれた湯飲みを棚から取り出し私の目の前に置いた。
「ほら、注いで。苦くなるから」
「あ、はい」
言われたとおりに湯飲みにお茶をいれ、センター長の所へ運ぶ。