一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
センター長は昨日と同じように自分のデスクで新聞を広げていた。
「お茶です」
「……ん」
お礼の言葉はない。まるでお茶が出てくるのが当たり前という態度。朝からイライラさせないでほしい。自分の席に戻ろと踵を返したとき、センター長のつぶやきが耳に入った。
「リカちゃんのお茶は旨かったのにな」
つまり、私のお茶はまずいということか。ムッとした私の視線の先にいた蓬田さんは怒っちゃダメとでも言いたげに首を横に振りつつ手招きしている。私はどうにか怒りを抑えて自分のデスクに戻った。
「そんな顔しないの。ここで生きていく術を学びなさい」
蓬田さんの言わんとすることは分からないではない。けれど、私には男性のご機嫌取りをするのは好きではない。間違っていると思う。時代遅れ甚だしい。
本社ではこんなことなかった。同じ会社なのにこんなにも違うなんて。
きっとリカちゃんはうまくやっていたのだろう。私には出来ない。大きなため息を吐く。ただでさえ好きになれない職場で自分の置かれた立場に納得ができなかった。
そんな私が周りの人と上手くいくはずもなく、私は物流センターで浮いた存在になってしまった。
仕事上の会話以外は誰ともせずに、与えられた仕事をこなす毎日。ルーチンワークには何のやりがいも感じられなかった。