CURRENT
私が何かを言う前に、部長は会議室から出て行ってしまった。
こんなところで2人きりにされても困る。
この現実を未だに受け止められていないのに。
別に、2人で話すこともないだろう。
そう1人で納得した私は、会議室から出ようとドアに手をかけた。
そのとたん、勢いよく腕を引かれてバランスを崩す。
なんとか踏ん張って倒れ込むのは止めた。
何するんだと相手を睨み付けようとする前に、さっきまでとは違う低い声が聞こえた。
「久しぶりだな」
その言葉に驚いて、彼を見る。
私と目を合わせたとたん、ニヤリと笑う。
「こんなとこにいるとは思わなかったな」
さっきまでとは、あきらかに口調もトーンも変わっている。
少しだけ、逃げ腰になってしまう。