こちら、私の彼氏です
私はおそるおそる目を開けた。


……嫌な予感は的中した。



「あのー、伊山?」

「ん?」

「ん? じゃない」


……私の右手には、手錠がかけられていた。
もちろんおもちゃだと思うけど。おもちゃっていうか……もしやいわゆる、オトナの玩具?



「なに、これ」

「お前、そういうプレイ好きじゃん?」

「好きじゃない! ていうかなんでこんなもの持ち歩いてるの⁉︎ 変態なの⁉︎」

「変態じゃない。お前にちゃんと告白したら、その日の夜にベッドの上で使おうと思って持ち歩いてただけだ。でもなんとなくガマンできなくなって今使ってみた」

「変態じゃん!」

「いいじゃん、どうせこのあと俺んち来るだろ?」


……行かないよ、と否定できない自分が嫌だった。



……いや、でもこの手錠は困る。右手だけとはいえ、電車に乗れないし。



「ねえ、鍵は? あるんだよね?」

私がそう言うと、伊山はズボンのポケットに左手を突っ込んで。


「あるよ。これ」

と、ボールチェーンのついた銀色の鍵を私に見せる。



「よかった。はい、早く外して」

「えー」

「えーじゃない」

「つまんね」

そう言いながら、伊山は私にかけた手錠をなかなか外すことなく、左手の人差し指にボールチェーンの輪をひっかけ、指先で鍵をくるくると回す。

そんなことして鍵がどこかに吹っ飛んでいっちゃったらどうするのーーと言おうとした矢先。
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