E・N・M・A~えんま~


「なぜ泣く?」




悲しそうに切れ長の目をいっそう細くして、彼がワタシの頬を撫でた。



そうされて、初めて気付いた。







ワタシが泣いていたことに――。





彼の瞳と、ワタシの瞳が絡み合い、互いが互いを磁石のように引き寄せあっているのを感じた。



名前も知らないこの人を、ワタシは遠い昔に愛していたのかも知れないと。



血流は熱くたぎり、こんなにも彼を求めているから――。



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