姉弟ごっこ
す、鋭い!

「へ!?」

声が裏返った。
私が分かり易いだけなのかも?

恥ずかしくて顔を背けたら、「このところ残業続きでしたし、早く帰りたいですよね。さくっと終わらせましょう」後輩は励ますように明るく言った。

「そうね、頑張ろうね」

何件か顧客様と電話が繋がって、結果を店長に報告した後ようやく一日の勤務を終えることが出来た。

待ち合わせの時間ギリギリだったから、私は足早にショップを後にする。
早く帰りたい後輩スタッフたちと肩を並べて、従業員専用の出入口から外に出たときだった。

「ねえ見て、あの男の人」

後輩の一人が一点を見つめながら、声を潜めて呟いた。

「わぁ、イケてるね!見掛けない顔だけど、どっかの店のスタッフかな?」

興奮した調子で言ったもう一人の後輩の目線を辿ると、ビルの外壁に背中をもたれ、佇む男性の姿が窺える。

「いや、あのスタイルはモデルさんとか?ていうか、こっち見てない!?」

更に後輩は弾む声を押し殺すように、口元を手で抑えて言った。

歩くうちに、その人物との距離が段々狭まる。
背格好や顔付きに、なんだか見覚えがあることに気付いた私は、見えてる光景が現実かひどく頭が混乱しだした。

足を進める私たちを、相手が目視して体をこちらに向けた。
お互いに真正面に顔を見て、もう確信するしかない。

「よぉ、ねぇちゃん。お疲れ」

さ、哲史!?
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