姉弟ごっこ
「遅かったな」などと言いながら、哲史は私たち三人の前に立ちはだかった。
後輩たちは目を点にさせ、私と哲史を見比べている。
「白濱さんの弟さん、ですか?」
「ち、違います!」
声を張った私に、左右にいた後輩たちは同時に肩をびくっと揺らした。
“ねぇちゃん”なんて呼ばれて、弟じゃなければ果たしてどういう関係なのか。
という困惑した目線が左右から飛び交ってきたが、「同僚の方?お疲れ様です」と哲史がにっこりと微笑んだら、訝しげな表情はあっさり解け、二人は頬を染めて小走りに去っていった。
「人の前でねぇちゃんって呼ぶのやめてよね」
「呼べっつったのそっちだろ」
哲史が唇を尖らせた。
そうなのだ。実際に“ねぇちゃん”と呼べと強制したのはこの私だ。
芽衣子と哲史には兄弟がいたけれど、私はひとりっ子なので憧れていた。
だから私は自分の欲求を満たすためだけに、哲史に“ねぇちゃん”と呼ばせ、一人勝手に姉弟ごっこを楽しんで悦に入っていたのだった。
「ていうかあんた、なんでこんなとこにいるの?」
「ねぇちゃんが働いてるショップってこの駅ビルだろ?俺もここで仕事だったんだ」
「え?」
この駅ビルに、家具屋なんてないけど。
「仕事って、なんの」
「ま、いろいろとな!ねぇちゃんもそろそろ出てくんじゃねえかと思って張ってたんだ」
「いつから?」
「んなこと気にすんな、刑事みたいで楽しかったから」
皺を寄せてひひっと笑った哲史の鼻先は、夜風にさらされたせいか赤くなっている。
後輩たちは目を点にさせ、私と哲史を見比べている。
「白濱さんの弟さん、ですか?」
「ち、違います!」
声を張った私に、左右にいた後輩たちは同時に肩をびくっと揺らした。
“ねぇちゃん”なんて呼ばれて、弟じゃなければ果たしてどういう関係なのか。
という困惑した目線が左右から飛び交ってきたが、「同僚の方?お疲れ様です」と哲史がにっこりと微笑んだら、訝しげな表情はあっさり解け、二人は頬を染めて小走りに去っていった。
「人の前でねぇちゃんって呼ぶのやめてよね」
「呼べっつったのそっちだろ」
哲史が唇を尖らせた。
そうなのだ。実際に“ねぇちゃん”と呼べと強制したのはこの私だ。
芽衣子と哲史には兄弟がいたけれど、私はひとりっ子なので憧れていた。
だから私は自分の欲求を満たすためだけに、哲史に“ねぇちゃん”と呼ばせ、一人勝手に姉弟ごっこを楽しんで悦に入っていたのだった。
「ていうかあんた、なんでこんなとこにいるの?」
「ねぇちゃんが働いてるショップってこの駅ビルだろ?俺もここで仕事だったんだ」
「え?」
この駅ビルに、家具屋なんてないけど。
「仕事って、なんの」
「ま、いろいろとな!ねぇちゃんもそろそろ出てくんじゃねえかと思って張ってたんだ」
「いつから?」
「んなこと気にすんな、刑事みたいで楽しかったから」
皺を寄せてひひっと笑った哲史の鼻先は、夜風にさらされたせいか赤くなっている。