姉弟ごっこ
一瞬眉間に皺を寄せ、考えるように神妙な顔を作った久島さんは、哲史を凝視しながら言った。

「どこかで見たことがあると思ったら、もしかして渋川哲史さんですか?」
「そうです」

哲史はなぜか憮然とした顔で、短く答えた。

「あの、久島さん、知ってるんですか?この人」

たどたどしく哲史を指差すと、「この人ってなんだよ」哲史は睨むように私を見返した。

「ええ、だってほら、ここに」

言いながら、久島さんは駅ビルを指差した。そこには駅ビルで催されるイベントのインフォメーションが貼られている掲示板があった。

貼られた一枚のポスターには、でかでかと【新進気鋭の家具作家 渋川哲史展】の文字が。ちゃっかり写真も載っちゃっている。モノクロだけど、小さくだけど。

「さ……哲史展!?」

素っ頓狂な声をあげた私を、哲史は偉そうな目で見下した。

仕事ってこのことだったんだ。
そういえば、一階の特設会場に業者が忙しなく出入りしているなぁ、とは思っていたけれど。

「インテリア雑誌に最近よく載ってますよね。知り合いがあなたのファンで」

久島さんは照れたような顔で言った。
恥ずかしいのか外方を向いている哲史が、いちいち少年の顔付きでセクハラまがいなことを言ってくるこの哲史が!個人的に作品展を開催するなんてしかもファンがいるなんて!

もしかして、結構すごい奴なのかも?

「まひるちゃん、お知り合いなんですか?」

哲史の意外な一面に、声を失っている私の代わりに「ええ、田舎が一緒でして」哲史が答えた。いつもより数倍低く、あまり周囲に響かない声色だった。
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