姉弟ごっこ
どうしてここまで来て、一歩踏み出せないんだろう。
そう自問したとき。

「さっきの彼の言葉が、気になってるの?」

ぴたりと足を止めた久島さんが、真剣な目で私を見つめた。

「彼?」
「ほら、渋川さんの……」

首を捻りながら私は、頭の中で記憶を巻き戻す。

『帰り、あんまり遅くなんなよ?』

「一緒に住んでるって訳じゃないよね?」
「え!?」

別にやましいことなんかないから、久島さんに説明しても構わないんだけど。「あれはその、言葉の文みたいなものと言いますか……」頭の中がパニック状態の私は、訳のわからない言い訳を吐き出していた。

「言葉の文?」
「幼馴染みなんです、私たち。家族みたいな関係っていうか。だから別に深い意味はないし、私も哲史の言葉なんか全然これっぽっちも気にしてないですし!」

すれ違う通行人が振り向くほどの大きな声で、私は早口で言った。
すると、「そっか。なら、良かった」久島さんは安堵したように、溜め息をひとつ吐いた。

「さっきの彼の目がなんだか気になったからさ。なんか俺を、敵として見てるように感じたから」
「すみません、久島さんに不快な思いをさせてしまって」
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