姉弟ごっこ
「まひるちゃんが謝ることじゃないよ。そんな風に言われると、余計勘繰りたくなるだろ?」

眉を下げた久島さんが、弱々しく微笑んだ。

「駅まで送るよ。そのくらいならいいよね?」

先に歩き出した久島さんの横顔が、どんどん離れて見えなくなってしまう。なんだかこの恋が、遠くへ行っちゃうように思えた。

私は急いで追い掛ける。一歩踏み出すために。

「あの、久島さん!」私が呼ぶと。「手、繋いでもいい?」振り向いた久島さんは、右手を差し出した。「は、はい」

勢いづいたはずがなんだか拍子抜けしてしまって、私はおずおずと右手を差し出すと久島さんに預けた。
この手を離したくない。久島さんにさっきみたいな悲しげな顔で笑わせたくない。
そんな風に思いながら、恋人繋ぎってやつで駅までたどり着いたとき。

「そうだ」

別れ際、久島さんはポケットからなにかを取り出した。

「これだけは受け取ってくれないかな」

目の前に差し出されたのは、綺麗に包装された小さな箱だった。

「付き合った記念に、今夜渡したかったんだ」
「記念?」
「大したものじゃないけど、まひるちゃんが気に入ってくれたら嬉しい」
「嬉しいです、ありがとうございます!」

奥歯にものが挟まったみたいに、ちょっとだけ言葉を濁し、久島さんは続けた。「まあなんていうか、厄除けのお守りみたいな感じなんだけどね」と。
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