姉弟ごっこ
* * *

確かに、厄除けにはなった。

その後、哲史の頬は腫れたけど、バカなことするヤツが悪い。それに、職人に大事な手は傷付けないでやったんだ、感謝して欲しい。
リビングで哲史はしばらくのたうち回っていたけれど、私は放ったらかして自室に閉じ籠った。

翌日、さすがに気まずいなぁと思いながら朝起きてみたら、哲史はどこにもいなかった。
出勤して駅ビル内に貼られたポスターをよくよく見たら、作品展は明日からの三日間で、ちょうどうちのショップのフェアと同じだった。

フェアに備え、ディスプレイを替えたり予算を組んだり忙しくて、閉店後に残業してやっと帰れたんだけど、哲史が帰宅したのはそれより遥かに遅い夜中だった。
きっと準備で忙しいのだろう。

気まずいので顔を合わせずに済んで私はホッとしたけれど、哲史がここ出て行くまでの間、ずっと避けて過ごすってわけにもいかない。
哲史ママやお母さんの顔が、頭にぼんやり浮かんだ。

「白濱さん、お疲れですか?」

目の前でサンドイッチをかじる後輩は、さっきからずうっとカップの中でスプーンを撹拌し続ける私を不審そうに見つめた。

「ううん、大丈夫」

後輩に笑顔を向け、すっかり砂糖が溶けきった紅茶を一口啜る。

ついにフェアの開始日。
全スタッフ総出で接客に当たるので、お客様のご来店が少ない昼時に、二人ずつまとめて休憩に入るよう店長から言われた。
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