姉弟ごっこ
催事場の入り口には人が密集していて、そのほとんどは若い女性だった。

『インテリア雑誌に最近よく載ってますよね。知り合いがあなたのファンで』

久島さんが言っていたのは、お世辞じゃなかったのかも。
私は人とぶつからないようにキョロキョロしながら、作品展に足を踏み入れた。

哲史が木材で作っているのは、家具だけじゃなかった。
催事場の中心は靴を脱いで入るスペースになっていて、木の温もりを感じられる積み木や手押し車、パズルなどがたくさん広げられ、子供が自由に遊んでいる。滑り台もあった。

私はその光景を見ながら、だから若い女性が多いのか、と合点がいった。小さい子供をもつママさんに人気だったんだ。

「へぇ、すごいなぁ」

私は感心しながら、場内をゆっくり見て回った。

奥の方に会議用のテーブルやパイプ椅子が置かれていて、そこで哲史が若い女性たちに囲まれて談笑している姿が見えた。
子供たちが自由に遊んでる傍ら、ママたちは哲史に夢中か。

「そろそろ戻らなきゃ」

ちょうど一周して催事場を出ようとしたとき、何気なく振り返ると、滑り台の階段を上るよちよち歩きの女の子がふらりとバランスを崩した。

「危ないっ!」

体が勝手に動く。咄嗟に駆け寄った私は、滑り台から落下した女の子をしっかり支えた。
きょとんとした女の子に、「大丈夫?」笑い掛けたとき、ヒールがぐらついて私はひやっとした。
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