姉弟ごっこ
* * *

「いらっしゃいませー……」

声が間延びしたのは、ショップに入店した人物が見知った相手だったから。
時刻は遅く閉店間際。仕事終わりに寄ってくれたんだと思う。

「まひる、お疲れ!DMが届いてたよ」

翌日、フェアに芽衣子が来た。
ちょうど顧客様の接客を終えた私は、そろそろ閉店準備をしようとしているところだった。

「もう少ししたら上がれるんでしょ?一緒に夕飯でもどう?」

今日も無事に予算を達成し、店長も上機嫌だから残業なしですんなり帰れそうだ。

「閉店したら出入り口んとこで待ってて」

私が小声で言うと芽衣子はにこりと頷き、店内をぐるぐる見て回っていた。そしてカットソーを一枚選んでレジに並んだ。

「お買い上げありがとね」
「いえいえ、カットソー一枚じゃ売上にはあんまり貢献できなかったんじゃない?」
「そんなことないよ、芽衣子も大事な顧客様だよ」

閉店後に駅ビルの外で落ち合った私たちは並んで歩きながら、「どうする?いつもの居酒屋行く?」「そうだなぁ、もう少しがっつり食べたいからファミレスとかにする?」などと話していると、「あ。」ふと名案が浮かんだ。

「ピザとかどう?」

いいねぇ、と芽衣子が同意してくれたので、私はある場所へ彼女を案内した。
そう、久島さんに連れてきてもらった、あの隠れ家レストランだ。
< 36 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop