姉弟ごっこ
「そいえばアイツ、夕飯ちゃんと食べてるかな」

話題を替えた私に、「アイツ?」まだどこか腑に落ちない表情で芽衣子が呟いた。「哲史だよ哲史」私が声を張って言うと、「ああ」芽衣子は固まってた顔をようやく崩して微笑んだ。

「同居はどう?うまくいってる?」
「え、知ってたの?哲史が今芽衣子の部屋を使ってるって」
「もちろん」

グラスビールを一口飲んで喉を潤した芽衣子は、ぴんと背筋を伸ばして胸を張った。

「私が勧めたんだもん、あの部屋使ったら?って」
「は!?なんでまた」
「うーん、哲史の役に立ちたくて」

よくわからないけれど、恐らくうちのお母さんみたいに芽衣子にとって哲史は幾つになっても“少年さっちゃん”のままなのかもしれない。
うちのアパートから駅ビルまでは近いし交通の便もいい。忙しい作品展の間、あの部屋に住むのは合理的だ。

「それに私があの部屋を出ていくときまひるの顔に書いてたもん。芽衣子、私を独りにしないで!って」
「嘘!?」
「ウッソ~」

はぁ?と、口から空気が漏れた。
そんな私の間抜け顔に直面して、芽衣子は口角を引きつらせてニヤニヤと笑った。

「だからちょうどいいんじゃないかと思ってさ。仲良くやんなよ?一週間なんてあっという間だよ」

ええっと、それって……。
もしかして、久島さんはやめといた方がいいとか言って、哲史と私をくっ付けようとしてるんじゃないでしょうねえ?
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