悪魔な彼が愛を囁くとき
目を開けて鏡を見れば、予想どおり真横に顔があり鏡越しに視線を合わせてくる男。
無駄に顔がいいから近過ぎる距離にドキドキして頬が熱くなってしまう。
それをごまかす為に
「いいんじゃないですかね」
ツンケンした口調になっていた。
「俺が直してやったんだからいいに決まってるだろうが…見れる顔になったぞ。くっククク……」
私の頭を小突き意地悪く笑っている男。
「ありがとうございます」
「お前、男に振られたか?」
「……」
突然の振りに言葉が出てこない。
本当にこの男は優しくない。
ズケズケと遠慮なく傷口をえぐってくる。
接客業の私が会社勤めの男と付き合うなんて無理があったのだろうか?
付き合い始めは楽しくて少しの時間でも会いたいと思っていたのに、少しずつのすれ違いから会う回数が減って…気がついたら彼氏には他にも女がいたってよくあるパターン。
それでもって、最悪な事に他の女と鉢合わせってよくある話。
昨日の祝日、久しぶりにお休みをもらえた事にウキウキして彼氏を驚かせようと内緒でアパートに押しかけた。部屋から出てきたのは女で、表札を思わず確認したけど彼氏の部屋で間違いない。