悪魔な彼が愛を囁くとき
「どちらさまですか?」
「あなたこそ?」
お互い牽制し合うなか、奥から聞き覚えのある声が聞こえる。
「おーい…誰だった⁈」
私の顔を見てギョッと驚く男。
「健太、この人知り合い?」
健太、私の彼氏の腕に巻きつくように腕を絡め体をくねらせる女。
「……あっ、えっと……」
すぐに答えられないのかよ。
「安心して、鍵を返しにきただけだから…さ・よ・う・な・ら健太」
アパートを出てしばらく歩いても、追いかけてもこない。
彼にとって私って追いかける価値のない女だったってこと⁈
自分のアパートに戻って悔しくて自棄酒。ビールの空き缶を片手に健太との思い出の品を仕分けしてゴミ箱に…
一緒にとった写真
お揃いのペアリング
お揃いのマグカップ
出張のお土産に買って来てくれた品々
そして、健太が泊まり用に用意してたスウェットや歯ブラシ、それに箸にお茶碗までみんなゴミ箱に捨てた。
結構真剣な付き合いのつもりだっただけに傷口が深い。
涙がポロポロと溢れてきて止まらなかった。
トドメを刺したのは健太からのメール
『ごめん、鈴とはもう付き合えない』
私、振られたんだ…
メールで別れを言うなんてサイテー