最果てでもお約束。
いろいろ準備をしたり、風呂の場所等話しをしているとあっという間に9時を少し回ってしまった。
「さて、そろそろ出かけるか」
「お弁当は持ったー?」
おれがそんなモン作ってたか?あ?
「・・・・・・」
華麗に流して先程は転げるように降りた階段をゆっくりと下りる。
地面に右足が降りると同時に
「あらおはようさん」
真後ろから声がかかった。
「ひぇ」
ほんとにひぇっていう人に初めて会ったよ・・・
「あ、おはようございます」
ぺこりとお辞儀。この二階建て事務所の管理人兼事務員である安藤ばぁちゃん。
通称ばぁちゃん。・・・まんまですね。
「あら、お友達?珍しいねぇ」
満面の笑顔でぼくの後ろを見やる。
「あ、おはようございます。親戚の者ですー」
さすがベテラン旅人(多分)愚鈍では生きていけないんだろうなぁ。
「そうかいそうかい。気をつけていってらっしゃい」
満面の笑顔で送り出されてしまった。
「なんだぁ、いい人じゃない。さっきの話って本当かよー?」
うりうり、と肘でわき腹を小突かれる。
「安藤ばぁちゃんはあの日に家族をみんな失ってる」
「え・・・」
「恐らく・・・昼までにはこの地域に余所者がいる事が知られる。一人歩きは厳禁な」
「りょ・・・りょーかい」
ちょっと脅しすぎたかもしれない。でも、もしって事もありえる。
こいつの事嫌いじゃないしな。
・・・・・・ん?
「そういえばさ、名前聞いてなかったよな?」
「オス!あんまりにも聞かれないから名前って概念がねーのかと思いましたオス!」
んな訳ないだろ・・・。
「ぼくは・・・平坂。平坂洸(ひらさか こう)」
「オレは伊月晃(いつき あきら)アキラでいいよ。そっちは・・」
「こうでいい」
「さんとか付けたほうが?」
「あんまりこだわり無いから呼び捨てでいいよ」
「あんがと。楽で助かるよ」
ちなみにもちろん偽名である。本名をちょっとモジってみた。
コンプレックスなんだよなぁ。
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