最果てでもお約束。
地雷埋蔵活動。
かつてこの町にはちょっとしたブームがあった。
あの悲劇よりももっと前、4国がまだまだ四国だった頃。
本州と四国を結ぶ大きな橋を築く計画。その計画はこの町に沢山の恩恵をもたらした。
その恩恵の一つ、とはいっても当事者達にとってはいい迷惑だったかもしれない。
国は超巨大な橋を建設するに当たって、全国から優秀な技術者を町に集めた。
今ではない。20年くらいも昔の事。単身赴任者は少なく、家族みんなでこの片田舎に引っ越してきた。
町の学校では、転校生が溢れた。
ぼくも、幼馴染の永冨 夕(ながとみ ゆう)もその沢山の中の一人。
あの日、ぼくとあいつは出会った。出会うべくして。

「どうも、今度からお世話になります」
「いえいえ、ご近所同士仲良くやりましょうねぇ」
母親達の会話が一段落ついた。ぼくはと言えば、ずっと母親の後ろに隠れるようにして立って、一つの物を見つめていた。
あいつも、同じように母親の後ろに隠れてたまに顔を出すだけ。
ぼくはその動作が面白くて可笑しくて、ずっと凝視していた。
「お子さんはいくつになるんですの?」
「えぇ、今年で8歳です」
「あらーうちの子と同じ歳です。ほら、こう!」
ぼくは猫のように後ろ首をつかまれて前に引きずりだされた。万力のような力で。
「ひ、引っ越して来ました。よろしくお願いします」ぺこり。
今思えば、それは親がすっかり言ってしまった事だったのだけれど、ぼくはそれよりも夢中な事があった訳で・・・。
「よろしくね~。ほら、ゆう」
あいつも猫のように引っ張り出されるのだ、とちょっと期待したのだが、向こうの母親はうちの母親よりも人権を守る性質であったらしく、無理には引っ張りださなかった。
「・・・・・・・・」
あいつは母親の後ろに隠れたまま、ちらちらと覗くだけ。
だよな。子供には子供のルールがある。
親に仲良くしなさいと言われて仲良くするってのは、ちょっと違うよな。
だからぼくは
「う、うちにゲームあるよ。一緒にやろう」
遊びに誘った。
あいつは少し迷いながら、長い長い、本当に長い一歩をぼくに向かって踏み出した。
「・・・ん」
ぼくとあいつは、一秒で友達になった。
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