最果てでもお約束。
「・・・・だそうだ」
彼の五感と身体能力の全ては軽く常人を超える。理由や原因はわからない。まさかサイボーグでは無いのだといいけれど、はっきりと断言できない程凄い。
俗に言われる”天才”なのかもしれない。なんの”天才”かは大いに謎だが。
「ん・・・待てと言ったが今ちょうどいい所だ。しばらく待ってもらうぞ」
「待てと言われて待つバカが・・・」
がっしとアキラの二の腕を掴む。げ、やわらかい。
口には出せないので目でしっかりと語りかける。
(斬られるぞ。マジで)
まぁかっこで閉じてみたモノの、漫画ではないのでちゃんとその意思が伝わったかわからないが。
(ばっかだいじょぶだってー)
ほらアキラがそんな感じの表情してるんだもん!
やるんだって彼は!マジで!
ついでに冷や汗まで額に垂らしてみた。これで気がつかないのなら主人公格からは落第な。
アキラは(やれやれ、まぁしかたないかぁ)などといった按配。
危機管理能力が問われる。おれの寿命も問われる。
結局彼の読書が切りの良い所まで来たのはそれから30分近くも後になった。
「さて、お前らもう行っていいぞ」
「は?」
本から顔を上げるなり第一声がこれ。あんたこの30分はこっちに視線もくれなかったじゃん!?
「”南”の奴なら攻撃してくるか逃げるだろう。さしずめ旅行者といった所か」
ゴソゴソとポケットに本をしまう。
「それにこうが”南”と関わるとは思えんしな」
・・・・ご名答。どんなに寝覚めが悪かろうが、ぼくが”南”の人間と知っていて関わる事は無い。
「筆者の魂は見えましたか?」
またもびくっとする。アキラ・・・そんなに早死にしたいのか?
しかしこの質問は大層彼のお気に召したらしい。
「ずっと前、初めて読んだ時から見えていた。寂しさだな」
人を何人も斬ってきてなお無垢な瞳が少しだけ笑ったような気がした。
「アキラ、変わったナリだが・・旅人なら仕方ないのかもしれないな」
アキラは何も言わず目を伏せるにとどまった。
ではな、そう言い残して彼が姿を消すまで、ずっと。
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