最果てでもお約束。
「だからありがとうっつってるでしょ!!」
「いらんと言うに」
・・・・・ただ単に真後ろにいました。何故か雰囲気を悪くして。
真後ろをゆっくり振り返ると、そこには東の宮に登ることが出来る石階段の3段目くらいに立ったアキラの姿。
「感謝も受け取れない野郎は馬に蹴られてんがんぐ」
アキラはもちろんサ○エさんの真似をしたかったわけではない。ぼくが正面から口を塞いでやったからだ。・・・・このボケめ。
「ふん・・・前と同じだから相手も同じかと思ったが。違うな」
ふむ、と左手で顎をさする彼。
「い、いやぁ・・すいません」
やっぱりそうですよね。こいつがあいつに見える訳が・・・あ。
「はにゃひてふれ(離してくれ)」
「悪い・・・」
ぼくの左手は既に唾液でベトベトです。命まで救って失言まで未然に防いでやったというのにこの仕打ちはなんだ・・・・。
「まぁいい、出来の良い昔話みたいで楽しかった」
またいつかのように大きな背を向けて去って行こうとする彼。
「あ、さっき連絡あった奴」
くるりと振り返って
「もし見つけたら、教えてくれ」
そう言うだけ言って、また背を向けて歩き出す。
ぼくは、膝から完全に力が抜けてすとんとその場に力が抜けて土台の役目しかしなくなった膝を落とす。
「・・・・こう?どした?」
その背に向けて中指を立てていたアキラが覗き込んでくる。
アキラは見なかったのだろうか?あの、最後に見せた恐ろしい目を。
「寂しい目だったね」
中指を立てて悪態を吐いていた顔が一瞬で柔らかく、優しい顔に。
「寂しい?」
こいつは目がおかしいのだろうか?あの目を見て・・・寂しい?
「ん・・・もちろん怖いよ?でもね、なんだか必死で友達や、家族や、なんてーの?大切な人を探しているみたいでさ」
ふぅ、と溜息も一つ。
「そうかなぁ・・・」
ぼくにはその感想はちっともわからなかった。
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