君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 内心では、あっけらかんなんてしてないんだろうけど、これが亜里沙流の心の納め方なんだと思う。

「やっぱり亜里沙って強いね」

「まーねー。もともと雑草みたいに逞しく生まれついたんだと思う。それが過酷な環境で、さらに鋼のように鍛えられたのね」

「なんか尊敬しちゃうな」

「尊敬されるようなことじゃないよ。……ただ入江さんに、あたしの十分の一でも図太さがあったらな、とは思うけど」

 亜里沙の言葉に、あたしはうなづいた。

 うん、本当に亜里沙の言う通りだね。

 入江さんと亜里沙の境遇は似ている。ふたりの違いなんて、ほんのわずかなことなんだろうと思う。

 なのに、ちょっとしたタイミングのズレで、道が分かれてしまった。

 ……やっぱり生きるって怖いね。そう考えると。


 放課後になって、あたしと亜里沙は帰宅するために一緒に生徒玄関に向かった。

 自分の靴箱の中の革靴に指を突っ込むと、カサリと覚えのある感触がする。

 あたしは中に入っているメモ用紙を取り出して、広げてみた。

『いろいろと、すみませんでした。 中尾美弥』

 その一文を読んだあたしの頬は、自然と緩んだ。

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