君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

「さあ奏、俺と一緒に行こう」

 校門の手前で立ち止まり、空を見上げているあたしに凱斗が声をかける。

 うん、そうだね。行こう。

 あたしたちは、ここを通り抜けなければならないんだ。

 傘の柄を握る凱斗の手に、あたしは自分の手を重ねた。

 ふたりでしっかりと傘を差し、並んで校門を通り過ぎ、真っ直ぐ前を向く。

『雨の日に、相合傘で校門を通ったふたりは永遠に結ばれる』

 そんな伝説、心の底から信じているわけじゃない。

 不確かで不条理な『だまし絵』の世界に、そんな保証なんてどこにもないことを、あたしは知った。

 それでも大好きな凱斗と並んで、相合傘で校門を通ることは、無意味じゃないんだ。

 凱斗の手の温もりを感じながら、ここを一歩踏み出すことで、あたしたちの世界がまた変わっていくから。


 関わり合うことは、生きていくってことだから。


 出会えてよかったと心の底から思える凱斗と一緒に、今日も明日もあさっても、あたしは世界を生きていく。

 そして、思うんだ。


『この世界にうまれてきて、よかった』って。




 
     【END】

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