君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 自分にそう言い聞かせながらリュックを机の上に置いた時、亜里沙が近づいて来た。

「おはよう、奏」

「あ、おはよう亜里沙! 今日の古典って小テストだよね!? お願い教えてー!」

 あたしは意識して明るく振る舞い、凱斗のことを頭から追い出そうと努力した。

 さっそく机の上にテキストを広げて、亜里沙の説明に熱心に聞き入る。

「だからね、こっちは謙譲語で、こっちは尊敬語でしょ? それによって主語が誰かを推理して……」

「…………」

「奏? 聞いてる?」

「あ、ご、ごめんもう一回」

 なのに、気がつけば頭は勝手に凱斗のことばっかり考えてるし。

 凱斗の横顔や、笑顔や、あの背中が、あたしの心の中にもう貼りついてしまっているんだ。

 ダメだ。どうしても切り替えられない。
 そう簡単には好きな人を忘れられないし、失恋からは立ち直れない。

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