諸々の法は影と像の如し
 章親らがその場を去って少ししてから、一人の少年が森の横道から姿を現した。
 惟道である。

 惟道は森をぐるりと見渡すと、奥の一点を見た。
 不思議な穢れがあったところも綺麗に浄化されている。

 しばらくその場を見つめ、惟道は章親らの去ったほうに目をやった。

「……安倍の陰陽師……」

 小さく呟き、しばらく誰もいない空間を見つめていた惟道は、少し歩を進めて、穢れのあったところからさらに奥に進んだところで、腰に差していた小刀を抜いた。
 それを腕に当てる。

 軽く引くと、す、と血の線が走り、一筋血液が流れた。
 ぽつ、と足元に、血が落ちる。

 惟道は懐から出した懐紙で小刀を拭くと、腰に戻した。
 腕の傷にも懐紙を当て、社のほうに目をやると、そのまま踵を返して姿を消した。
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