諸々の法は影と像の如し
「あんな洛外の屋敷まで出向いてくるとは、よほど深い仲の女子なのか?」

 守道が言うが、惟道は水面に目を落としたまま、じっと様子を窺っている。
 どうやら女子は何かを道仙に訴えているようだ。
 床に手をついて、打ちひしがれている。

「式部卿の姫君……」

 ぽつりと惟道が呟いた。
 それに、え、と章親と守道が顔を上げる。

「えええっ? 式部卿の姫君って、確か守道、ご病気じゃなかったっけ?」

「ああ。ずっと伏せっていると聞いたが」

 以前守道は、姫君の祈祷に伺っている。

「物の怪絡みじゃなかったが。でもこうして見ると、以前よりも弱っているような。治らないから、今度は道仙に祈祷を頼みに来たのか?」

 ちょっと不満げに、守道が言う。
 己よりも道仙を頼られたというのが気に食わない。
 が、惟道が、目は水面から離さずに口を開いた。

「違うな。元々姫君は病ではない。道仙に恐怖を植え付けられて、操られている」

 ぎょ、と二人が目を剥く。
 初めて聞いた。

「どういうことだ?」

 詰め寄る守道は無視し、惟道は章親を見た。

「声は聞こえないのか?」

 ちょい、と水盆を指す。
 映像だけで、音は聞こえていないのだ。

「あ、もうちょっと近付けば、音も拾えるけど。でもあんまり近寄ったら、道仙殿に式だって気付かれちゃう」

「奴に見破る力はない」

 きっぱり言われ、引きながらも、章親は水面を見つめた。
 章親の思念を受け、式が動いたのだろう、道仙と姫君の姿が大きくなった。
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