狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
(女性として、女性として…………うーん……)

 あの後、キュリオに宿題を見てもらい、ミキやシュウに教えた通りで間違いないとお墨付きをもらったものの……

「うぅ、今日の授業内容全部忘れちゃいそう……」

 早くもアオイの頭は許容量オーバー寸前で、その大部分をキュリオから出された難題を解くためにフル回転中だった。

(あ、そうだっ! お料理を上手に作れる腕! なんて……だめだよね、……努力しなきゃ意味
のないことだし……)

 ――疲弊した頭を休めようと本日二度目となる湯浴みを行ったアオイは、無意識に首元のチョーカーへ指を這わせると、ため息を零す。

(お父様はどういうつもりで言ったんだろう……明日ミキに相談してみようかな……)

 結局気分転換のために再び訪れた湯殿で良い案が浮かばず、髪の水気を取り寝間着を纏ったアオイはトボトボと部屋へ続く通路を歩む。


――ガチャ


「あ……」

 室内へ一歩入ったところでここがキュリオの部屋であることを思い出し、足早に父のもとへ向かう。

「ごめんなさいお父様っ……お待たせしました!」

(うっかり自分の部屋だと思い込んで長湯しちゃった……!)

 この時間のキュリオの部屋はじきに来る眠気を妨げぬよう、灯りの数がだいぶ少なくなっている。それらの行動はすべてまだまだ成長段階にあるアオイのためであり、本来のキュリオはかなり遅い時間まで書物を広げていたりするのだ。

「あぁ、私のことは気にしなくていい。アオイが望むなら明日は薔薇の花びらでも浮かべておこうか?」

「……! お父様が差支えなければぜひっ」

「お前と香りを共有することに障りなどあるわけがないさ」

「は、はいっ……」

「決まりだな」

 素直に喜ぶアオイに頷きながらこちらへ近づいてきたキュリオ。
 ゆっくり伸ばされた手は血色良くしっとりと濡れたアオイの頬を撫で、とある違和感に笑みを零すと肩を抱いてソファへ誘う。

「……?」

 てっきりそのまま湯殿へと向かうと思っていたが、今一度ソファへと座りなおしたキュリオへアオイは小首を傾げる。

「私の膝の上へおいで」

「……はい、……」

 彼の意図することがわからず、畏まりながらちょこんと腰をおろす。
 ただ指示されるがままにキュリオの左腿のあたりへ横向きに座り、見上げるように父の目を見つめていると……


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