狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
「……考えごとでもしていたかい?」

「え?」

「ふふっ」

 美しい空色の瞳が優しくこちらを見下ろして。
 言葉では語らず彼の長く白い指が一点を指している。

「……っあ!」

 指摘されたアオイが手を伸ばすより早く。
 グッと肩を引き寄せられ、広い胸に顔を埋めるかたちで緊張に微動だに出来ずにいると、回された手は掛け違った寝間着のボタンを器用に直し始めた。

「あっ……、こ、これはその……っぼんやりしてて……」

 ようやく気付いた子供のような失態に顔を真っ赤にしてあたふたしていると、不意に腹部をかすめたキュリオの指先。

「……っ!」

 思わずドキリと肩を震わせたアオイにキュリオは気づく様子もなく、今度はサイドテーブルに置かれた未使用のグラスへ水を注ぐとアオイへ手渡した。

「長湯に限ったことではないが、水分補給も忘れてはいけないよ」

(顔……ち、近いっ――!!)

「……ありがとう、ございます……!」

 きゅっと目を瞑りながらグラスを受け取るも手が震えてしまう。

「…………」

(……勉強のしすぎか?)

 案の定、宝石のような瞳が探る様にこちらを凝視し、心までもが見透かされそうなアオイは自然と顔をも背けてしまった。

「……っ」

「疲れているのなら私を待たずに先に休むといい」

 触れるだけの口付を瞼へ落とすと、軽々と膝の上から娘の体を抱き上げる。

「だ、大丈夫です! まだちょっと髪も濡れてるしっ……」

「ああ、……それもそうだな。私の上着を持ってこようか」

「……いいえっ! 全然寒くないのでっっ! どうぞ湯浴へ……」

(いつものお父様なのに、なにか違う……っ!

 ちょっとした提案にも大げさに首を横に振られ、どことなく距離のある言い方で湯殿へ向かうよう促されてしまったキュリオ。

「……わかった。体が冷えてしまったら遠慮なく入ってくるといい」

「……っ!?」

 そう甘い言葉と笑みを残し、ようやくキュリオの腕から解放された体はソファへ沈む。
 しかし、アオイがほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、前かがみになったキュリオの胸元がシャツの間からチラリと肌を覗かせた――。

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