アバターの恋
赤松総監は少し、驚いたようだ。
男の噂が全くなく、犯罪心理学に没頭していた美人医師がまさか!石井が彼氏だったとは、と言う顔をしている。

磯山はこれで動きやすくなった。何も関係がない男に必死で動くのは男から常に嫌らしい目で見られるし、非協力的になる。

「そうでしたか、知りませんでした。石井も幸せ者ですな。二人のために全力を尽くさなければいけませんな」

「よろしくお願いします」
磯山は恋する女になりきり、しおらしく頭を下げた。

「先生、この捜査を担当しています近藤警部と一度、話をしていただけませんでしょうか?精神学が良く分かってないようで」

「はい、分かりました。早めに時間を作って総監にご連絡します」

磯山は、深々と頭を下げて、部屋を出た。

刑事部長が、出口まで丁寧に送ってくれ、また深々と頭を下げた。
磯山はタクシーを止め、梶山弁護士事務所に向かった。

磯山はタクシーの中でガッツポーズを取った。
「来週に石井さんが、出てくる」

磯山は、嬉しさのあまり一人で気持ち悪いくらいに二ヤニヤしている。

「後は、証拠を見つければいい……」
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