逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「しかもなかなかの美声だ」


 男はくすりと笑い、驚いて固まっている沙耶に近づき、足元のタオルを拾った。


「あっ、すみません!」


 沙耶は慌ててタオルを受けとり、深々と頭を下げた。

(常務室に来るということは、当然、常務だ。この人が!)

 上品な香水の香りと、一目で高級品とわかるスーツや靴。
 ずいぶん若いが、おそらくエール化粧品創業者の血縁なのだろう。

 
「このお時間は不在と聞いていましたので、申し訳ありませんでした」
「ああ、訓示を途中で抜けてきたからな」


 そして男は、うつむく沙耶の、首から下げているネームプレートを手に取った。



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